数学は、覚えることはそれほど多くありません。また、足し算、掛け算をのぞいて、実社会で使うことは、ほとんどありません。でも、なぜ教育が数学を重視しているかというと、数学ができる人は論理力や思考能力、そして事象を分析する力が高いからです。

物事は常に単純ではなく、また必ず目に見えていることばかりではありません。起こっていることの真実を突き止めるには、数学で学んだ概念や手法で、抽象化、モデル化して初めて明らかになってくることが多いのです。実際有名な発見、発明は、数学のベースの上になされたものが多いのです。

　数学力をアップするためには、達成感を積み重ねていくことです。したがって、「参考書選びのこつ」でも紹介しましたが、まず基本問題をしっかり解けることから始めましょう。一問解けただけではダメで、何度も何度も同じような問題を解くことを繰り返すことで、実力がついてきます。応用問題に行くのは、基本問題を解くことに何の障害もなくなってからです。基本問題が完全に解けるという自信が、ゆとりを生み、集中力を高めることで、次のフェイズにつながって行きます。応用問題をかなり解けるようになると、その分野を習熟したという達成感とともに、何でも来いという自信につながります。

　数学を人から習ってなんとなく理解できたことで、できる気持ちになる人がいます。でも、実際に自分で解こうとするとさっぱりできないはずです。なぜならば自転車と同じで、見てれば簡単にこげるような気がしますが、自分でやってみるとどうやっていいかわかりません。数学は自分でやってみて覚える学問なので、自分で試行錯誤しながら努力して、自分で解ければ満点、少しだけ教えてもらっても大きな自信につながります。

この点は、「数学の悩みと解決法」にも書きましたので参考にしてください。

　中学の数学で、１次方程式、連立方程式、２次方程式、式の展開、因数分解などたくさん計算問題を解きましたよね。なぜならば、高校の数学で何の問題を解いても、これが基礎になるからです。計算力があると、式さえ立てられればもう解けたも同然です。何でも、基本が大切、そして基本を繰り返し練習し、しっかり身につけることが次の飛躍を生みます。

　数学は、いろんな単元があって別々のようにも見えますが、それぞれ密接に関係しています。たとえば関数と方程式、単元が別なので別々の問題に見えますが、本当は密接に関係があります。よくわからなくなるのが方程式と恒等式、両方とも＝でつながっているので、同じようにも見えますが、実際は特定のｘでしか成り立たないのが方程式、ｘが何であっても成立するのが恒等式です。

当たり前のようなことでも、しっかり理解していないと足元をすくわれます。数学は計算の学問でもあり、概念の学問でもあるのです。数学者が晩年哲学者になるのが多いのは、そこのところなんです。少し難しかったですね。

　最後に、数学の効果を言います。数学は難しい学問ですが、一旦身につくと一生忘れないのです。社会は覚えればよいのですが、すぐに忘れます。でも数学が身につくとそう簡単には忘れません。したがって数学の力がつくと、入試が迫る大切な時期に暗記物に集中できます。英語も国語も同じ所がありますが、数学に不安がある場合とない場合の差はものすごく大きいです。気持ちの余裕、時間の余裕が、他の教科の力も自然に押し上げます。これが受験は数学といわれる「ゆえん」です。

受験は数学、しっかりマスターしましょう